「本日のパル」
冬冶さんのエッセイ・・・・・
『時空のゆがみ』 アインシュタインが一般相対性理論で予言したことは、おおむね正しいことが証明されている。しかしまだ観測も実証もされていないものが残っている。
そのうちの一つは、巨大な質量を持つ物体の周囲では時空が歪んでいる、そしてその物体が回転していれば、その周囲の時空は回転の方向に引きずられてしまうというのである。
地球も自転により回転運動している。地球の周りの時空も、地球の自転によってひきずられているのだろうか。
それを検証するために、この20日にNASAは人工衛星GP-Bを打ち上げた。
GP-Bは18ヶ月にわたり高度640kmの軌道を97.5分ごとに一周する。
従来の三千万倍という超高精密なジャイロスコープ(姿勢観測装置)を4台搭載して、衛星に積まれた望遠鏡をペガサス座のIM星に向け続け、その光を基準にジャイロスコープと超伝導量子干渉計によって衛星の姿勢変化を検知し続けるのである。
もし地球の自転により地球周辺の時空を引きずっていれば、衛星の姿勢への変化として検知することが出来る。検出が成功すれば、初めての実証例となるのである。
ブラックホールが回転していなければ、ロケットは中心の特異点に向かってますぐに落ち込む。もし時計回りに回転していればそれに近づくロケットは左向きに強制的に引きずられながら、落ち込んでゆくのである。この引きずり効果はこれを唱えた二人の物理学者の名をとって、レンズ・シェリング効果と呼ばれている。
つまり今回の人工衛星打ち上げは、地球の自転によるレンズ・シェリング効果で地球の周辺の時空が引きずられているか否かを検証する試みである。
地球の周囲の歪みを観測するアイデアは、すでに50年代からあったが、資金面と技術面から延期されてきた。
今回の打ち上げが旨く行けば1年半ほどのうちに結果が出ると期待されているのである。
(2004.4.22)
『重力波』アインシュタインの一般相対性理論で予言された現象のうち、ブラックホールの存在は既に確かめられている。時空の引きずりの方は、NASAが人工衛星GP-Bを打ち上げて観測を始めている。地球の周りを周回しながら、地球の周囲の時空が地球の自転の方向に引きずられているなら、そこを通るGP-Bの傾きとして検出されることになる。
いまだ直接的に検出されていない現象に、重力波がある。アメリカを始め日本や欧州が巨大な観測装置を建設して、世紀の発見に激しい一番乗りを競っているのである。
電荷がないと存在しないと考えられていた電場(電気力が働く空間)や磁場(磁力が働く空間)は、電荷が振動すると波となって、電荷を離れ遠くまで伝わってゆくことが出来る。これが電磁波である。アインシュタインの予言は重力場も同じように物質を離れ、重力波となって空間を伝播することが出来るというのである。
大きな質量を持つ天体の回りには、強い重力が働く。天体に何らかの衝撃がもたらされると、そこから重力波が発生する。
超新星爆発やブラックホール同志の衝突、銀河の衝突など、強い重力を持つ天体の運動で、さまざまな規模の重力波が宇宙空間へ放出されるという。
もともと大きな質量やエネルギーを持つ天体が衝突や爆発などによって質量やエネルギーの分布が急激に変化した時に発生するのである。
アメリカと同じ観測法で(LIGO)、地下トンネルにTAMA300という重力波干渉計をおいて、日本の国立天文台のチ-ムが観測を既に行っており、重力波の影響によるレーザー光線の微妙なズレを検出する。10のマイナス19乗程度のわずかなズレも検出できるそうだ。
さらには神岡鉱山の地下で、より感度のたかいレーザー干渉計を設置して重力波の検出を目指す計画(LCGT)が進んでいる。
欧州の計画(LISA)では、地球公転軌道に3個の人工衛星を打ち上げ,各衛星間にレーザーを走らせて、重力波による乱れを検知する方法だが、衛星の打ち上げは2010年ごろの予定だという。
いまのところ、アメリカのLIGOや日本のTAMA300などの重力波検出装置が、一番乗りを目指しているのだが、日本のLCGTや欧州のLISAがその後を追いかける予定になっているのである。
重力波の存在が検出されれば、一般相対性理論の正しさがまた確かめられることになるのである。
(2004.05.19)
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